Amazon Connect 公式ブートキャンプをやってみよう! – STEP 0「準備編」

Amazon Connect 公式ブートキャンプをやってみよう! – STEP 0「準備編」

「ステップ・バイ・ステップ」でAmazon Connectを使ったコールセンターシステムの構築方法を解説します。(連載記事全6回の第1回目)
Clock Icon2021.09.27

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みなさん、こんにちは!
福岡オフィスの青柳です。

クラウド上にコールセンター/コンタクトセンターを構築できるAmazon Connectは、ドラッグ&ドロップでブロックを組み合わせた「フロー」を作ることで、コールセンターのシステムを構築できることが特徴です。

既に、実際にシンプルなフローを作成して「お客さまが電話をかける」「オペレーターが電話を受ける」という基本的なコールセンターの仕組みを構築してみたという方も多いのではないかと思います。

でも、もっと本格的なシステムを構築しようとした時に「どこから手を付ければいいんだろう?」「こんな機能はどうやって実装すればいいの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Amazon Connect Bootcamp

そんな「初心者からステップアップしたい方」にピッタリなハンズオン教材がAWSから公開されています。

その名も「Amazon Connect Bootcamp」

https://amazon-connect-introduction.workshop.aws/

この「ブートキャンプ」には、Amazon ConnectとAWS各種サービスを組み合わせて、以下のような機能を実装するための手法が盛り込まれています。

  • 営業時間判定
    • 営業時間 (電話を受け付ける曜日・時間帯) を判定して、営業時間外の場合は自動メッセージを流す
  • メニュー分岐
    • 数字キーによって問い合わせメニューを選択して、問い合わせ種類に応じた担当オペレーターへ振り分ける
  • 顧客管理
    • 発信者番号から顧客IDを識別して、顧客が数字キーで入力した誕生日による本人確認を行う
    • データベースに登録された顧客情報を顧客IDで照会して、顧客に応じた応対を行う
  • コールバック
    • 顧客がコールバックを希望した場合、指定した電話番号へオペレーターから折り返し電話を行う
  • 対応履歴
    • 過去の問い合わせについて、現在の対応状況を音声メッセージで聞くことができる
    • 過去に問い合わせた際に対応したオペレーターと再度会話することができる
  • Amazon Lexを使った音声認識
    • 数字キーを押す代わりに音声で要件を話すことで、要件に応じた担当オペレーターへ割り振る

これらがコールセンター/コンタクトセンターで求められる機能の全てではありませんが、ここに挙げた機能を実際に手を動かして構築することで、Amazon Connectの実践的な知識や技術が向上すると思います。

ブートキャンプで構築するシステム

このブートキャンプに沿ってAmazon Connectを構築すると、最終的には以下のようなシステムが出来上がります。

黄色の枠の一つ一つが「コンタクトフロー」となっていて、全部で8つのフローを組み合わせてシステムを構成しています。

各フローの内容はこんな感じです。

結構複雑なフローになっていますね。 これを一度に構築するのは大変そうです。

また、頑張ってこれらのフローをなんとか構築し終わっても、いざ動作を確認しようと思って電話を掛けてみると・・・エラーが発生すると通話が「ブツッ!」と切られてしまい、どこに問題があるのか原因を調べて修正するのも一苦労になりそうです。

「ステップ・バイ・ステップ」でやってみよう

そこで、一度に最終形を全部構築するのではなく、基本的な構成から初めて一つずつ機能を追加していく「ステップ・バイ・ステップ」の方式を採用したいと思います。

今回は、次のように全6ステップで進めることにします。

まずは「STEP 0」として、今回のシステムを構築するのに必要なAmazon Connectの各種設定を行います。

準備

Amazon Connectインスタンスを作成する

Amazon Connectの「インスタンス」とは、1つのコールセンター (コンタクトセンター) の環境に相当します。 AWSアカウント内に複数のAmazon Connectインスタンスを作成することができます。

今回のブートキャンプのためのインスタンスを作成しましょう。

AWSマネジメントコンソールで「Amazon Connect」を開き、インスタンスの一覧画面で「インスタンスの追加 (Add an instance)」をクリックします。

インスタンス作成画面が開きますので、設定内容を入力して行きます。

まず、オペレーターや管理者などのユーザーを管理する方法を選択します。 今回はスタンダードな「Amazon Connectでユーザーを作成および管理」を選択します。

続けて、インスタンスの名前を入力します。 名前がインスタンスURLの一部となっているため、全世界で一意である必要があります。 (既に存在するURLと重複しているとウィザード完了時にエラーとなりますので、その時は諦めて別の名前で作成しましょう)

管理者ユーザーの情報を入力します。 パスワード管理の観点から、ユーザー名は「admin」等ではなく人に紐付いた名前にする方がよいでしょう。 (インスタンス作成後にユーザー管理で管理者ユーザーの追加や削除が行えるため、人に紐付いていても問題ありません)

今回構築するのは一般的なコールセンター業務のシステムですので、「着信」「発信」の両方を有効にします。

その後の「データストレージ」と「確認して作成」の各画面は、内容を確認して次へ進めてください。

インスタンスを作成したら、表示されている「Access URL」のリンクをクリックしてログイン画面を開き、管理者のユーザー名とパスワードを入力してログインします。

ログイン後、コンソールの表示言語を「日本語」に設定しておきましょう。

電話番号を取得する

Amazon Connectインスタンスで使用する電話番号を取得します。

※ 電話番号の取得に関する留意事項について

2021年9月現在、Amazon Connectで日本の電話番号 (03-、050-、0120-、0800-) を取得するためには「書類による申請」が必要となっています。 (電気通信事業に関する法改正への対応であるようです)

使用するAWSアカウントで既に申請済みであれば問題ありませんが、そうでなければ申請を行う必要があります。 また、個人利用の場合にはこの申請自体が受理されません。

もし、申請を行うことが不可能・困難である場合、代わりに米国の電話番号を取得する等でブートキャンプを進めることになります。 国際電話の通話料金などについては十分にお気を付けください。

画面左側のメニューから「ルーティング」→「電話番号」の順に選択します。
「電話番号の管理」画面で右上の「電話番号の取得」をクリックします。

「DID (直通ダイヤル)」タブを選択して、国/地域は「日本 (+81)」を選択します。

リストアップされた電話番号のいずれかを選択して「保存」をクリックします。 (この時点では「問い合わせフロー/IVR」は設定しません)

オペレーション時間 (営業時間) を作成する

コールセンターが電話を受け付ける営業時間 (曜日と時間帯) を定義します。

画面左側のメニューから「ルーティング」→「オペレーション時間」の順に選択します。
「オペレーション時間」画面で右上の「新しい時間の追加」をクリックします。

以下の通り設定します。

  • 名前: BusinessHours
  • 説明: 営業時間
  • タイムゾーン: Asia/Tokyo
  • 曜日と時間帯: 「月曜日から金曜日 (土日は削除)」「午前9時~午後5時」

「保存」をクリックしてオペレーション時間の作成を完了します。

「キュー」を作成する

「キュー」とは、顧客から掛かってきた電話をオペレーターが順番に対応できるようにするための「待ち行列」のことです。

今回のコールセンターで必要となる「キュー」をいくつか作成していきます。

画面左側のメニューから「ルーティング」→「キュー」の順に選択します。
「キュー」画面で右上の「新しいキューの追加」をクリックします。

1個目のキューの情報を入力します。

  • 名前: SalesQueue
  • 説明: 購入前相談
  • オペレーション時間: BusinessHours

その他の項目は設定しません。
「新しいキューの追加」をクリックしてキューの作成を完了します。

同様の手順で、あと2個「キュー」を作成します。

  • 2個目のキュー
    • 名前: InquiryQueue
    • 説明: 新規問い合わせ
    • オペレーション時間: BusinessHours
  • 3個目のキュー
    • 名前: SupportQueue
    • 説明: 既存問い合わせ
    • オペレーション時間: BusinessHours

「ルーティングプロファイル」を作成する

「ルーティングプロファイル」とは、キューに入った顧客からの電話をユーザー (オペレーター) に割り振るための設定です。

今回は2個のルーティングプロファイルを作成します。

画面左側のメニューから「ユーザー」→「ルーティングプロファイル」の順に選択します。
「ルーティングプロファイル」画面で右上の「新しいプロファイルを追加」をクリックします。

1個目のプロファイルの情報を入力します。

  • 名前: SalesRoutingProfile
  • 説明: セールス部門
  • チャネルと同時実行を設定: 「音声」のみにチェックを入れる
  • ルーティングプロファイルのキュー: 以下の1行を追加する
    • 名前: SalesQueue、チャネル:「音声」のみにチェック、優先度: 1、遅延(秒): 0
  • デフォルトのアウトバウンドキュー: BasicQueue

「新しいプロファイルを追加」をクリックしてルーティングプロファイルの作成を完了します。

同様にして、2個目のプロファイルを作成します。

  • 名前: SupportRoutingProfile
  • 説明: サポート部門
  • チャネルと同時実行を設定: 「音声」のみにチェックを入れる
  • ルーティングプロファイルのキュー: 以下の2行を追加する
    • 名前: InquiryQueue、チャネル:「音声」のみにチェック、優先度: 1、遅延(秒): 0
    • 名前: SupportQueue、チャネル:「音声」のみにチェック、優先度: 1、遅延(秒): 0
  • デフォルトのアウトバウンドキュー: BasicQueue

これで、以下のような2通りの「割り振り」が行えることになります。

  • キュー「SalesQueue」に入った電話 → セールス部門のオペレーターに割り振る
  • キュー「InquiryQueue」または「SupportQueue」に入った電話 → サポート部門のオペレーターに割り振る

ユーザー (オペレーター) を作成する

コールセンターのオペレーター (Amazon Connectでは「エージェント」と呼びます) となる「ユーザー」を数名作成していきます。

まずは、「セールス部門」に所属するユーザーを作成します。

画面左側のメニューから「ユーザー」→「ユーザー管理」の順に選択します。
「ユーザー管理」画面で右上の「新しいユーザーの追加」をクリックします。

作成方法として「作成 (個別に入力して作成する)」か「アップロード (CSVファイルから一括作成する)」が選べますが、ここでは一人ずつ個別に作成します。

ユーザーの情報を入力します。

  • 名: 一郎
  • 姓: 財津
  • ログイン名: ichiro
  • Eメールアドレス: (省略)
  • パスワード: (任意のパスワードを設定します)
  • ルーティングプロファイル: 「SalesRoutingProfile」を選択
  • セキュリティプロファイル: 「Agent」のみ指定

ルーティングプロファイルに「SalesRoutingProfile」を設定することで、このユーザーは「SalesQueue」に入った電話を受けることができるようになります。

その他の項目はデフォルトのままにします。
「保存」をクリックしてユーザーの作成を完了します。

同様の手順で、「セールス部門」と「サポート部門」の各オペレーターを2名ずつ、計4名のユーザーを作成しておきます。

ログイン名 Eメールアドレス パスワード ルーティングプロファイル セキュリティプロファイル
一郎 財津 ichiro (省略) - SalesRoutingProfile Agent
二郎 坂上 jiro (省略) - SalesRoutingProfile Agent
三郎 北島 saburo (省略) - SupportRoutingProfile Agent
四郎 岸辺 shiro (省略) - SupportRoutingProfile Agent

これで全ての準備が終わりました。

動作テスト用の「フロー」を作成する

ここまでの手順で、次回の「STEP 1」からの構築を行う準備が整いましたが、正しく設定されていることを確認するために、動作テストを行いたいと思います。

動作テスト用に「問い合わせフロー」を作成します。

画面左側のメニューから「ルーティング」→「問い合わせフロー」の順に選択します。
「問い合わせフロー」画面で右上の「コンタクトフローの作成」をクリックします。

コンタクトフローの画面が表示されるので、ここに「ブロック」を配置してフローを作成して行きます。

まず、フローの名前を「BootCampFlow1」と入力します。

左側の「ブロック」一覧から「設定」を展開して、その中にある「音声の設定」をドラッグしてフローに配置します。

「エントリポイント」の「開始」から「音声の設定」の左側面に線を引くイメージでマウスをドラッグすると、線が繋がります。

同様にして、以下のブロックを配置して、各ブロックの間を線で繋ぎます。

  • (2) 「操作」の「プロンプトの再生」
  • (3) 「設定」の「作業キューの設定」
  • (4) 「終了/転送」の「キューへ転送」
  • (5) 「終了/転送」の「切断」

次に、配置した各ブロックに設定を行って行きます。

(1) の「音声の設定」の図の部分をクリックしてみてください。

画面右側にプロパティ画面が開きます。 以下のように設定します。

  • 言語: 日本語
  • 音声: Mizuki
  • 言語属性を設定: チェックを入れる

「Save」をクリックして設定を保存します。

同様にして、他のブロックのプロパティも設定します。

(2) 「プロンプトの再生」

  • 「テキスト読み上げまたはチャットテキスト」→「テキストの入力」の順に選択
  • テキスト欄: 「お電話ありがとうございます。」と入力
  • 解釈する: 「テキスト」を選択

(3) 「作業キューの設定」

  • 「キュー別」→「キューの選択」の順に選択
  • キュー: 「SalesQueue」を選択

(4) 「キューへ転送」

  • 「キューへ転送」タブが選択されていることを確認します

(5) 「切断」

設定項目はありません。

各ブロックのプロパティの設定が終わりましたら、画面右上の「公開」をクリックします。

「公開」を行うことで、作成・修正したフローの内容がシステムに反映されます。

「保存」ボタンは設定内容を保存しますが、保存したのみではシステムに反映されない状態です。
必ず「公開」を行うことを忘れないでください。

作成した「フロー」に電話番号を紐付ける

作成・公開した「問い合わせフロー」を、取得済み電話番号に紐付けます。
これによって、顧客から掛かってきた電話がフローによって処理されて、オペレーターが電話を受けることができるようになります。

「電話番号の管理」画面を開きます。

取得済みの電話番号をクリックします。

「問い合わせフロー/IVR」から、さきほど作成した問い合わせフロー「BootCampFlow1」を選択します。
「保存」をクリックして設定を保存します。

実際に電話を掛けて動作をテストする

さて、これで動作テストの準備ができました。

では、顧客として電話を掛けてみましょう・・・その前に、電話を受ける側、つまり「オペレーター (エージェント)」が用意をしておかなければなりませんね。

現在、構築のために管理者ユーザーでログイン中ですので、Webブラウザのシークレットウィンドウやゲストモードを使ってAmazon ConnectインスタンスのログインURLを開きます。

「セールス部門」に所属するオペレーター「ichiro」のユーザー名とパスワードを入力してログインします。

ログイン後、画面右上の「電話」アイコンをクリックします。

「CCP (Contact Control Panel)」が起動します。

この時、Webブラウザのポップアップで「マイクの使用許可」を求められる場合がありますので、「許可」します。

「Offline」をプルダウンして、ステータスを「Available」に変更しておきます。

では、電話を掛けてみましょう。

取得済み電話番号へ電話を掛けると、まず「お電話ありがとうございます」とアナウンスが流れます。

その後、オペレーター (エージェント) のCCP画面に着信が通知されます。

「通話を受信」をクリックして電話を受けます。

通話が始まると、顧客とオペレーターが会話することができます。

顧客、オペレーターのいずれかが電話を切ると、通話は終了します。

オペレーターのCCP画面が「アフターコールワーク」になりますので、「連絡先を閉じる」をクリックします。これを行わないと次の着信を受けることができなくなりますので、注意してください。

以上で動作テストは完了です!

無事に電話が繋がるところまで出来ましたでしょうか?
もし上手く行かない場合は、ここまでの設定内容を見直してみてください。

補足:電話を掛けた時の「謎の英語のアナウンス」を止める方法

動作テストを行ってみて、なんだか「?」な事に気付いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

電話を掛けた時に、「お電話ありがとうございます」の後に「サンキュー・フォー・ユア・コーリング ~」と棒読み口調で謎の英語のアナウンスが流れませんでしたか?

Amazon Connectインスタンスを作成して、デフォルト設定のままフローを構築して利用を開始した場合に、このような現象に遭遇することがあります。

この現象への対処法は、、、あります!

下記のブログ記事で対処法を解説していますので、チェックしてみてください。

おわりに

いかがでしたでしょうか?
「準備編」と言いつつも、ここまで来るのには結構手間がかかりましたね。

でも、今回しっかりと準備を済ませましたので、次回からの本編ではスムーズに構築が進められるのではないかと思います。

次のステップは「STEP 1:メニューを備えた基本的な問い合わせフロー」です。 是非ご覧ください。

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